人事・組織づくりのコラム|ミライエール

新卒の定着は「安心できる場所」づくりから。内定の時期から始める受け入れ設計

新卒の定着は「安心できる場所」づくりから。内定の時期から始める受け入れ設計

2026年10月31日 16:51

内定式が終わり、来春の入社に向けて準備を進めている企業様も多い時期ではないでしょうか。

「やっと採用できた」
「今年は内定辞退もなく、ほっとした」

そのお気持ちは、本当によくわかります。けれど、私は採用のご相談を受けるたびに、こうお伝えしています。

採用は、入社してからが本当の勝負です。

新卒の3人に1人は、3年以内に辞めています

厚生労働省の調査(令和4年3月卒業者、2025年10月公表)によると、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8%。およそ3人に1人が、3年以内に最初の会社を離れています。

そして、事業所の規模が小さいほど、この数字は高くなります。大学卒の場合、従業員1,000人以上の事業所では27.0%ですが、30〜99人では41.9%、5〜29人では52.0%にのぼります。人を採ることが簡単ではない中小企業ほど、「入社後に辞めてしまう」ことの影響は大きいのです。

辞める理由は「期待と違った」だけではありません

では、なぜ辞めてしまうのでしょうか。

厚生労働省の「若年者雇用実態調査」(令和5年)で、初めて勤務した会社を辞めた理由を見ると、上位は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(28.5%)、そして「人間関係がよくなかった」(26.4%)でした(複数回答。新卒に限らない若年労働者全体の結果です)。

「人間関係」というと、誰かとの対立やハラスメントを思い浮かべるかもしれません。けれど、人事として25年、いろいろな職場を見てきて感じるのは、その手前にある**「誰にも聞けなかった」「ここに自分の居場所がない」という孤立感**の大きさです。

新卒社員は、会社の言葉も、仕事の進め方も、周りの人の名前さえも、すべてが初めてです。そのなかで、「こんなことを聞いたら迷惑かな」「できない人だと思われたくない」と感じて、小さな疑問や不安を一人で抱え込んでしまう。その積み重ねが、ある日突然の「辞めます」になることが少なくありません。

受け入れる側から見ると、「何も言ってこなかったから、大丈夫だと思っていた」。
本人から見ると、「誰にも言えなかった」。

このすれ違いは、お互いに悪気がないからこそ、気づきにくいのです。

「安心できる場所」があると、力を出しやすい人は少なくありません

25年、たくさんの新卒の方と関わってきて、もちろん人それぞれですが、私が出会ってきた方には、こんな方が多くいらっしゃいました。

  • 慎重で、安心・安全を大切にする方

  • 少し先の自分の姿(ロールモデル)が見えると、安心できる方

  • 働き方や好きなことについて、すでに自分なりの考えを持っている方

  • 「ここにいていい」と思える、自分の存在価値を示したい気持ちのある方

こうした方は、「安心できる場所を確保して、そこから挑戦する」という進み方をすることが多いように感じています。

もちろん、最初から飛び込んで力を伸ばす方もいます。年代や世代でひとくくりにせず、一人ひとりに合わせて関わることが前提です。そのうえで、安心できる場所がないまま挑戦を求められると、静かに心を閉ざしてしまう方もいます。

だから、順番として意識しておきたいのは、挑戦が先ではなく、安心が先ということです。どんなタイプの新人にも、外れにくい考え方だと思っています。

私が実践した作戦:面接に2〜3年目の社員を起用し、そのままメンターに

座談会を開く、先輩との交流の場をつくる。これらは、どの会社でもやっていることだと思います。

私が実践したのは、面接に、入社2〜3年目の社員を起用し、その社員を、採用した新人のメンターにするという設計です。

候補者にとっては、面接の場で、少し先の自分の姿が見えます。内定が出たあとも、入社してからも、同じ人が関わり続けるので、入社初日が「知っている人がいる場所」になります。内定の時期の安心感が、入社後も続いていきます。

この設計には、もう一つの狙いがありました。先輩社員の側です。自分が面接で関わった人を迎える立場になると、先輩の中には、親心のような気持ちが育っていきます。それを見込んで、若いうちに後輩を支える経験、つまり早い段階でのメンバーマネジメントを経験する機会になるように組み立てました。

新人の安心と、先輩の成長。この両方を、はじめから狙っています。

メンターの役割は、新人と職場をつなぐ「通訳」です

新人にとって、社会人の大人と日々関わることは、多くの場合、初めての経験です。学生のうちは、関わる相手を、ある程度自分で選べました。気の合う友人、入りたいサークル、選んだアルバイト先。けれど、職場では、上司も先輩も選べません。この差は、想像以上に大きいものです。

入社したばかりの新人は、まだ職場全体が見えていません。上司の意図や背景まで見渡すことは、どうしても難しいものです。上司には上司なりの意図や想いがあります。なぜこの仕事を任せたのか、なぜこの伝え方をしたのか。けれど、それが言葉にされないまま、新人に届くことはほとんどありません。意図が伝わらないまま言葉だけが届くと、「冷たい」「怒られた」としか受け取れないこともあります。

だから、環境や関係性に慣れるまでは、上司の意図や想いを、新人にわかる言葉に「通訳」してくれる人が必要です。その役割を担うのが、年齢の近い2〜3年目のメンターです。

仕事は、そのうち覚えます。時間がかかるのは、仕事よりも、環境と人間関係への適応です。だからこそ、たくさんの配慮と仕掛けが必要になります。

肝になるのは、人事の「設計」です

ただし、これは「先輩に任せればうまくいく」という話ではありません。肝になるのは、人事が、事前に設計を組み込んでおくことです。

  • 目的と効果を、先に決める(誰のために、何のために、先輩自身にとってどんな意味があるか)

  • 関係者へのインプットを、念入りに行う(先輩本人、その上司、現場のメンバーに、目的と期待を丁寧に伝える。通訳をするには、上司がどんな意図で新人と関わるのかを、先輩が知っている必要がある)

  • 先輩のモチベーションが高まる動きを、計算して組み込む(「やらされている」ではなく、「自分が選んだ後輩を迎える」と思える流れにする)

  • 全社に、この活動を適宜共有する(「これから取り組みます」「いま、こうしています」「こうなりました」と、節目ごとに伝える)

前回お伝えした「採用を人事だけの仕事にしない」「社員が採用に関わることを誇りに思えるようにする」という考え方は、入社後にこそ効いてきます。採用に関わった社員は、「自分たちが選んだ仲間」として、自然と新人を気にかけるようになるからです。

まとめ

採用のゴールは、内定を出すことでも、入社してもらうことでもありません。入社した人が、その会社で力を発揮し、「ここでやっていこう」と思えることです。

仕事は、そのうち覚えます。難しいのは、新しい環境と人間関係に慣れることです。そのために、内定の時期から入社後まで、「安心できる場所」を意図してつくる。その場所を支える先輩や現場の動きを、人事が計算して設計しておく。この順番を意識するだけで、定着は変わっていきます。

もし、「新卒の受け入れ、何から手をつければいいのだろう」「現場の先輩に、どう協力してもらえばいいかわからない」と感じたら、まずは無料相談で、お聞かせください。内定の時期の関わり方から入社後のフォローまで、現場に合った形で、一緒に考えます。


関連コラム



← ホームに戻る(法人向けページ)


他のコラムも読む ▶ コラム一覧