
「フィードバックが怖い」と感じる管理職へ ― 部下に嫌われずに伝える技術
2026年10月02日 16:53
「フィードバックが怖い」と感じる管理職へ ― 部下に嫌われずに伝える技術
「部下に嫌われたくない」
その気持ち、実は悪いことではありません。むしろ、部下のことを大事に思っているからこそ生まれる感情です。
ただ、その気持ちのまま行動すると、たいてい2つのどちらかに転びます。言いたいことを我慢し続けて、ある日突然爆発するか。オブラートに包みすぎて、結局何も伝わらないか。
どちらも、部下のためを思ってのことなのに、結果として関係がこじれてしまう。そんな経験、心当たりはないでしょうか。
私にも、忘れられない経験があります。
年上の部下に対し、変に気を使いながら遠回しに伝えたことで、相手が勘違いして動き出してしまったのです。
軌道修正のために話をした際、「最初から言ってくれれば」とイライラさせてしまいました。
仕事の成果も、関係性も悪化し、関係修復までにかなりの時間を要しました。
相手を思って気を使うほど、肝心なことが伝わらなくなる。そこには、ちゃんと理由があります。
なぜ、フィードバックは怖くなるのか
これは、心理学で「MUM効果」と呼ばれる現象で説明できます。1970年にアメリカの心理学者、シドニー・ローゼンとエイブラハム・テッサーによって提唱されたもので、人は「悪い知らせを相手に伝えること」を本能的に避けようとする傾向を持っています。
相手を傷つけたくない。あるいは、自分が悪者になりたくない。そうした気持ちが、フィードバックを先延ばしにさせたり、言葉を薄めさせたりするのです。
つまり、フィードバックが怖いのは、性格や勇気の問題ではありません。誰にでも起こる、ごく自然な心理現象です。そう分かるだけでも、少し肩の荷が下りませんか。
「伝え方」より「関係性」が9割
とはいえ、「怖いのは自然なことです」で終わらせるわけにはいきません。ここで多くの管理職が向かうのが、「伝え方のテクニック」を学ぶという方向です。サンドイッチ法、Iメッセージ、SBI型フィードバック……もちろんどれも有効ですが、実はその前に、もっと影響の大きい要素があります。
それが「関係性」です。
同じ言葉でも、日頃から自分を見てくれていると感じている相手から言われるのと、そうでない相手から言われるのとでは、受け取られ方がまったく違います。テクニックは、関係性という土台があって初めて効果を発揮します。
土台がないままテクニックだけを磨いても、部下からすれば「急に何を言い出すんだろう」という違和感の方が強く残ります。
日頃の感謝、雑談、進捗への関心、小さな変化への気づき――そうした積み重ねが、フィードバックを受け止めてもらうための"信頼残高"になります。
私が大切にしているのは、「性善説に立つ」ことです。
「言ったことをやらないダメな人だ」と見るのではなく、「この人なりに一生懸命なんだ。じゃあ、どう支援できるだろう」と一拍置く。この一拍が、解決の糸口になります。
性善説に立つといっても、事実を曖昧にするわけではありません。事実は事実として伝えたうえで、相手を責めずに「どう支援できるか」を考える、ということです。
ミライエールが担う"鏡"としての役割
とはいえ、関係性を築いている最中でも、言いにくいことは言いにくいものです。ここで私たちがよくお手伝いするのが、"鏡"としての役割です。
部下が本音を上司に直接言いにくいのと同じように、実は上司も、部下に本音を直接言いにくいものです。第三者であるミライエールが間に入り、双方の状況を整理して伝えることで、直接対決を避けながらも、本音に近いところまで届けることができます。
1on1トレーニングでは、このやり取りを見て終わりにするのではなく、上司ご自身が"鏡"としての伝え方を身につけられるよう、実際の1on1に伴走しながらお伝えしています。
まずは1つの成功体験から
最後にお伝えしたいのは、いきなり全部を変えようとしなくていい、ということです。
「フィードバックが怖い」という感覚は、積み重なった苦手意識でできています。それを一気に払拭しようとするより、小さな一歩の方が、結果的に長続きします。
たとえば今週、メンバーに「最近、いいことあった?」と聞いてみてください。話してくれたら、そこに乗っかって、素直に一緒に喜びましょう。「特にないですね」と言われたら、「ないのかよ!じゃあ、また来週な!」と軽く終えても良いですし、部下が気づいていない「いいこと」を伝えてみましょう。たとえば、「そういえば、前にもらったあの資料、私はけっこう気に入ってるよ」と、あなた自身の感想として伝えてみる。決して評価ではなく、感謝の気持ちを乗せて。
それだけで十分です。
小さな成功体験が1つできると、「思ったより大丈夫だった」という感覚が積み上がっていきます。
その積み重ねこそが、怖さを減らす一番の近道です。
「部下にフィードバックするたび、身構えてしまう」と感じられたら、まずは現状を整理するところからご一緒できます。
1on1トレーニングの詳細はこちら → https://miraiyell.com/1on1training
実際にご一緒した企業様の声はこちらでもご紹介しています。
出典:Rosen, S., & Tesser, A. (1970). On reluctance to communicate undesirable information: The MUM effect. Sociometry, 33(3), 253–263.